■2009.03.30 北海道新聞朝刊文化欄のコラム「アートエリア・21世紀」に取り上げて頂きました。
インタビューの時は全然上手く伝えられなかったのですが、とても丁寧に汲み取って頂けて、本当に感謝…!
-心眼越しの内的世界- どんなに慣れ親しんだ景色でも、あるいは初めて見る風景でも、どこか距離があって、心や身体になじまないような感覚に襲われることはないだろうか。この風景のなかにいる自分は何だろう、見えている景色は自分にとって何だろう、と。札幌の生まれ活躍する小林麻美は外界に対して、そんな揺らぐ距離感を持ち続ける。だからこそ、風景に何かしらつながれる要素がある時、それは「特別な」景観として小林の心体に波動を送り、「描きたい」衝動をもたせる対象となる。最前面とを覆う金網は小林の心眼のフィルターであり、その向こうに広がる景色が小林の内的世界だ。見るものは網の手前で、小林と同じ位置にある自分をより意識しながら、見る行為へと誘われる。小林の心体感覚が生んだ重層的な画面の構造は、「画家が見ていた世界を見る」という絵画の根本的な構造を直截的に見る者に示す仕掛けといえるだろう。そして揺れるように、しかし丹念に塗られたソフトフォーカスの画面は小林のたおやかな心根を表すものにほかならない。(くめあつし=道立近代美術館主任学芸員)
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